旅行会社と旅行者間で最も多いトラブルは取消料に関することだと言われています。
旅行サービスは、日常のお買い物と違い、旅行代金をサービスの提供を受ける前に先払いするため、旅行者にとってはやむを得ず旅行を取りやめるにしても、キャンセル料を払うのはサービスを提供して貰っていないのに無駄な出費をすることなので、出来れば避けたいものでしょう。
一方、旅行会社からすれば、旅行者へ提供する客室や交通機関を確保するためにかかった人件費や仕入れ費用があるので、せめてその見合い分はキャンセル料として収受したいといった意味があります。
そんな両者の思惑から取消料はしばしばトラブルになります。
中でも多いのは、旅行内容の変更を巡っての取消料についてです。
例えば、朝食付の予約を朝食無しの予約に変更するにも取消料がかかることをご存じでしょうか?
一般的に言われる変更とは、取消と再予約(=キャンセル&リブック)のことで、キャンセル料発生日以降に旅行内容を変更しようとするとキャンセル料がかかるのですが、このことを知らない方が多いと思いますので、以下で詳しく解説します。
旅行の申込みは契約行為
旅行者は旅行会社を通して旅行の申込みをします。
希望の日程でホテルの予約を取り、代金を支払いチケットをもって出発します。
このなんら変哲のない旅行者と旅行会社の間で行われるのは「契約」行為です。
契約は双方の合意でされるので、どちらか一方が勝手に契約内容の変更は出来ません。
例えば、家を借りる時の賃貸契約は、その賃貸契約の内容(入居条件や家賃)を貸し主や借り主が一方的に勝手に変えてはならないイメージがあると思います。
双方が合意した条件だからこそ契約が成り立つのであり、契約後に合意したはずの条件が変えられる契約が認められたら世の中何でもありになってしまいます。
変更は契約解除と再契約
旅行業での契約内容は、旅行申込み時に手交される取引条件説明書(オンライン旅行会社の場合は予約前に表示される長い文章)によります。
取引条件説明書には、旅行に関するサービスの内容、旅行代金、契約の変更・解除、責任・免責事項がまとめられています。
具体的には、旅行に関するサービスの内容、旅行代金とは、4月1日から○○ホテル2名1室朝食付きツインルーム禁煙部屋利用で一人1泊1万円といった条件です。
この契約内容を旅行会社が勝手に、10月5日から○○旅館4名1室2食付き喫煙和室部屋利用で一人1泊2万円にすることは出来ません。
また、旅行者の都合でも勝手に変えることも出来ません。
同じ例で考えると、4月1日から○○ホテル2名1室朝食付きツインルーム禁煙部屋利用で一人1泊1万円という条件で旅行予定の旅行者が、朝食付を朝食無しに変更はできません。
読者の中には、食事有りを無しにしたり、食事無しを食事付きに変更して貰ったことがある方もいらっしゃると思いますが、その変更は元契約の解除と、新契約の締結をした見かけでの変更であり、契約内容そのものの変更ではありません。
ここでトラブルの元になるのが、元契約の解除が取消料対象日になっている時です。
旅行者としては、食事の有り・無しの選択は客室は変わらず、朝食券が付く・付かない位で軽微な変更に思われることが多いのですが、旅行会社としては、食事の有無も含めて契約です。
そのため、食事の有無を変更するには契約解除と再契約となので、取消料が規定通りかかります。旅行者としては思ってもないことを話されたような気持ちになり困惑されます。
以下は私の推測ですが、こうしたトラブルが起こるのはオンラインの旅行会社と、旅行会社の窓口での予約での対応に違いがあると思います。
原因はオンラインの旅行会社と旅行会社の店舗での「変更対応」が違うから?
オンライン旅行会社で申し込んだ旅行は、予約後に予約内容の変更は基本的に出来ず、一切の変更は契約の解除と再契約(=キャンセル&リブック)となります。
オンラインの旅行会社では予約システムや予約管理システムの関係で人数の変更や追加などが対応出来ないためだと思いますが、これがオンラインの旅行会社ではキャンセル&リブックが必要と意識づける要因になっていると考えます。
しかし、店舗の場合は人数の追加や一部人数減は取り直しをしなくても対応出来なくもないこと(曖昧な表現なのは時と場合によるからです)であり、また、旅行者と旅行会社が対面するので「なんとかしてくれるだろう」といった期待があることで、キャンセル&リブックがまだまだ利用者に浸透していないと感じます。
先日紹介したJTBダイナミックパッケージをはじめとする価格変動プランは、契約時の条件で料金が決まるものなので一切の旅行内容の変更は出来ません。
今後ダイナミックパッケージを利用する方が増えれば、旅行契約に関する理解も浸透してくるかと期待しておりますが、それまでは変更の概念は基本的に無いと地道な発信が必要かと考えています。
補足:契約変更が出来る時はある?
旅行業約款では旅行会社による契約内容の変更について規定があります。
それは、天災、戦乱、暴動、官公署の命令、運送機関・宿泊期間の旅行サービスの中止(欠航、運休、休業など)などといった旅行業者の関与し得ない事由が発生し、これにより、旅行の安全かつ円滑な実施を図るためにやむを得ないときに限られるとあります。
海外旅行だとイメージしやすいのですが、旅行先の国が戦争や暴動により治安が悪化したとして、旅行者の安全を確保するために別の国への旅行にするとか、大きく旅程を変更するなどといったことを意味します。
一方、旅行者による契約変更についての規定はありませんが、旅行者は旅行会社が定める取消料を払えばいつでも契約の解除が出来るとしています。
旅行会社には契約解除について厳しい諸条件があるのに対し、旅行者は取消料を払えばいつでも契約解除が出来るのは、旅行者の自己都合で旅行に行けなくなった時や、気分が変わったといったどんな理由であれ契約解除出来るので、実は旅行者にかなり有利な条件だと思います。
旅行会社が、気分が変わったので契約解除しますなんてきっと認められませんから(苦笑)
まとめ
取消料にまつわるトラブルは今回のような変更にまつわるものだけではありません。
しかし、今回の解説を通して旅行の申込みとは契約行為であることと、契約内容の変更と旅行内容の変更は同じではないこと、変更は契約の解除と再契約で行うことが少しでも多くの方にご理解いただければ、トラブルは減っていくのではないかと考えております。
みなさまの今後の旅行の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただきありがとうございました。